せめて「地球くらい」仲良くしよう。世界中の国歌を歌う男

キャップからTシャツ、靴まで、全身「世界」柄の服で現れた、本間健太郎さん。自らを「国歌ジュークボクサー」と名乗り、全世界の国歌230カ国以上を歌えるという、人間離れした特技を持つ人物です。

さらに話を聞くと、俳優、映画制作、農業、DJなど、そのキャリアは異色そのもの…!健太郎さんの根底には、どんな考えがあるのか、話を伺いました。

https://youtu.be/ZNwdsAuulRE

「頭の中の99%」は国歌

 

まずは健太郎さんが何者か、伺っても良いでしょうか?

 
 

「国歌ジュークボクサー」を名乗っています。世界の国歌、230カ国以上を歌えます。

 
靴まで国旗柄!
 

230カ国ってほぼ全部ですよね…?どんなきっかけで歌うようになったんですか?

 
 

最初のきっかけは、小学生の時に「キン肉マン」を見ていて、戦いの前にソビエト国歌とイギリス国歌が流れて、「かっこいいな」と思ったこと。

あと高校を卒業して、ボランティアで世界エイズ会議に行く機会があったんです。その時に40ヶ国語の挨拶を丸暗記して行ったら、とても喜ばれた。それもきっかけの一つですね。

 
 

確かに日本人からスワヒリ語とかで挨拶されたら、嬉しいと思います…!

 
 

挨拶でも喜ばれるのに、国歌が歌えてしまえば、全世界の人と友達になれるんですよ。僕は最終的には宇宙と一体化したくて、まずは「地球くらい仲良くしようよ」と思っているんです。その第一歩として、相手の国のことを知る、という姿勢はとても大事だと思っています。

 
 

(地球くらいは…!)国歌はYouTubeとかで検索するんですか?

 
 

2003年ごろにYouTubeが生まれてからは断然便利になったんですが、それまでは本当に大変。

世界中に存在している「国歌オタク」と、ネット上の掲示板で「今大使館の前で国歌流れている!」とか、「スーダンの国歌は、国営ニュースの冒頭でかかる」とか必死で情報交換していました(笑)

 
 

毎日練習するんですか?

 
 

今となっては毎日国歌しか聞かないですし、練習するとか、そういう次元ではないです。頭の中の99%は国歌なので、残りの1%で物事を考えていますね!

 
 

変わっているとか、特徴的な国歌って何かあります?

 
 

かないさん…。

 
 

そんなのもうありすぎて、伝えきれないくらいですよ…。一旦3カ国分お話します。

1. インド
インドの国歌は、民族の名前をひたすら羅列している歌詞。民族によって異なる神様がいるけど、それぞれの心にいる神様を賛美しようよ、という曲なんです。素敵ですよね。

2. 日本
「君が代」も実は、とても面白いですよ。戦後の名残もあって、君が代は昔はヨーロッパ風の音程だったんです。それを日本の雅楽の音楽家が、日本風のメロディーに変えたんです。それで日本の民族らしい国歌になったんですね。

3. 南アフリカ
南アフリカの国歌は、国内の5つの民族の言葉、全てが使われているんです。南アフリカはご存知の通り、アパルトヘイトと長年戦ってきた国。1995年の南アフリカ開催のラグビーW杯を機に、当時の大統領・ネルソンマンデラが、国を一つにしようと考えた。その象徴として、バラバラだった国歌も一つにしたんです。

 
 

面白い!そしてすごい知識量…。

 
 

実は僕、「さかなクン」をすごく尊敬していて。

30歳くらいの時、役者をやっていた関係でさかなクンと飲み会で一緒になることがあったんです。さかなクン、夜中の12時から朝まで、すごいテンションで魚の解説をしながら魚をさばいてくれて(笑)「好き」ってこういうことなんだな、と思いました。

当時僕は80カ国しか国歌を覚えていなかったんですが、その出来事に触発されて。そこから一気に200カ国まで覚えました。

 

俳優、映画制作、農業、DJの異色キャリア

 

俳優業をやっていた、というお話が出ましたが、今まではどんなお仕事を?

 
 

色々やってきました(笑)まずは大学受験に失敗して引きこもり。スーパー歌舞伎の女方として出させてもらって社会復帰し、その後は映画制作会社に10年間勤めました。

淡路島で1年農業で自給自足する生活を挟み、その後は「白A」というパフォーマンスグループで、DJとクラウンを担当。今年3ケ月だけイベント会社に所属し、その後はプロジェクションマッピング協会に所属し、今に至ります。

 
 

ちょっと訳が分からなくなったので、年表を作りますね!

 
 

引きこもっていた時期があったとは、今の陽気な健太郎さんからは想像できないですね…。

 
 

そうですよね。当時は受験に失敗したことが、とてもショックだったんです。でも俳優の養成所に通っていたこともあり、その時期にスーパー歌舞伎の女方として拾ってもらえました。

 
 

スーパー歌舞伎って何ですか?

 
 

現代人でも見やすいように、現代語訳された、新スタイルの歌舞伎です。スピード感も速くて、セリフをどんどん被せていくようなイメージ。

また、ストーリーを一度に全部見られる点も、違いますね。実は伝統的な歌舞伎って、演目の一部を切り取って公演しているので。スーパー歌舞伎の方が、衣装もすごい派手ですね。

 
 

ほお、知りませんでした!映画制作会社でも演じる仕事を?

 
 

そのつもりだったんですが…。

74歳のおばあちゃんが監督で。「あんた、ちょっと“インターネット”買ってきて」という指令から始まり、チラシ、ポスター、予告編づくりまでやっていました。映画作りを一から学べたのは結果的にはありがたかっのですが。

 

オリンピックの開会式で国歌を

 

 俳優業も映画制作業も経て、すごいキャリアです。

 
 

でも、映画製作所に10年ほど勤めて、そこでガクッとまた落ち込んでしまうんですよ。それが2011年の地震と、自分の大失恋。気持ちを切り替えたい思いもあり、淡路島に移住して農業を始めました。

 
 

の、農業…?

 
 

男女各100人が一緒に農業しながら1年間暮らす、移住推進のプロジェクトで。月に15万円もらえるし、空き時間には芸術活動もできる。そこの人間模様を映画撮って、淡路島唯一の映画館で上映させてもらいました。

 
 

そんなプロジェクトが!いろんな生き方があるな…(しみじみ)

 
 

一度自給自足の生活をしてみるというのは、自分が今まで考えてきたことの整理にもなって、とても貴重な体験でした。
その後は「何か面白いことをやってみたい」という理由で、「白A」というパフォーマンスグループに入り、DJとクラウンをやることになりました。

 
 

またガラリと変わった!白Aとは何でしょう?

 
 

白Aは「プロジェクションマッピング」「電子音楽」「身体」を組み合わせてパフォーマンスする団体で、有名なアメリカの番組「America’s Got Talent」では、セミファイナルまで勝ち残りました。

当時は、どんなパフォーマンスをするか、朝から晩までブレスト大会の日々。歌舞伎の技術を取り入れたり、国歌のパフォーマンスを入れたMCをやったり、楽しかったですね。

 
https://www.youtube.com/watch?v=yojDHMNeb7M
 

人間離れしたパフォーマンスで感動しました!どんな風に練習するんですか?

 
 

ブレストでパフォーマンスのアイディア出し→映像制作→道具制作→振り付け制作→動きの練習、という感じですかね。パフュームが最新設備でやっていることを、手作りでやっているイメージです(笑)

 
 

今も白Aで活動しているんですか?

 
 

いえ。白Aはアミューズ所属だったんですが、独立するタイミングで去年辞めました。そういったパフォーマーのキャスティングの仕事ができないかと、その後イベント会社に入るのですが、その会社は副業がNGで。

国歌関連のMC仕事ができなくて、なんと3ヶ月で辞めてしまいました(笑)

 
 

光の速さですね(笑)!

 
 

白Aで映像制作を担当していたこともあり、今はプロジェクションマッピング協会で働いています。最近では小田原城に映像を映し出すイベントに、関わっていましたよ。

 
 

本当に盛りだくさんな人生なのですが、全てに共通していることって何でしょうか?

 
 

実は小さい頃は、政治家になりたかったんです。何か世界を動かしたい、とずっと思っていました。でもレーガン大統領が役者から政治家になったと知り、単純な僕は役者になってしまった(笑)

でも国歌を歌うことも、映画を作ることも、エンタメを提供することも、何だか政治家の仕事に共通する気がして。エンタメだって、世の中を変えられます。僕は国歌で世界を平和にできると本気で思っているし、孤児院を作った偉人の映画を見て本当に孤児院を作った人もいます。

エンタメを通して世の中をもっと良くしたい、地球みんなに仲良くしてほしい、というのが僕の根底にある考えだと思います!

 
 

面白い!これからやりたいことを教えていただけますか?

 
 

一つはエンタメを軸に、街づくりに関わっていきたいです。今もアドバイザー的にある街の開発に携わっていて。

例えばブロードウェイは、「エンタメの街」としての文化があるから人が集まるんです。逆に「施設を作れば人が集まる」なんて、簡単なことではないと思います。エンタメ業界で培った経験で、世界中の人がもっと日本を楽しめるようにしたいと思いますね。

 
 

素敵!国歌もオリンピックに向けて、盛り上がりそうですね。

 
 

本当にそうなんです。オリンピックの開会式で、国歌をアフガニスタン(A)からジンバブエ(Z)まで全部歌いたい、という野望があって。今までも、家のテレビの前ではやってきましたが、次は国際放送でパブリックにやりたいですね!

とはいえ、究極の目標は宇宙と一体化すること。国歌を歌うのも、インバウンドに注力するのも、そこに行き着くんです。エンタメと国歌を軸に、これからも突き抜けていきたいと思います。

 
 

最高に楽しいインタビュー、ありがとうございました!

 

(取材・編集:かない、動画制作:アヤカ)

略歴:東京出身。全世界の国歌が歌える「国歌ジュークボクサー」。俳優、映画制作会社、白AのDJ/クラウンなどを経て、現在はプロジェクションマッピング協会で働きながら国歌パフォーマンスを行う。国旗柄の服の情報は、常に募集中とのこと。