感覚より統計。占い結果は「システム」が弾き出す

目の前には水晶玉が置かれ、不思議な音楽と共に何やら呪文が聞こえてくる…。占いと聞くとこんなシーンを想像するかもしれない。だが、占い師・尾崎亮介さんの占いの館に置かれるのは、パソコンとプリンターだけだ。

尾崎さんの専門である四柱推命とは、どんな占いなのか?謎に包まれた占い師の職業に迫る。

 

データに基づく占いとは

ーー まずは尾崎さんのお仕事から教えてください。

沖縄県那覇市で占い師をやっています。お店の名前は「占いならtoricoco」で、専門は中国起源の「四柱推命」。生年月日から、その人の性格や運勢を占います。占い歴はかれこれ7年ほどですね。

ーー どうやって占うんですか?

生年月日を専用のシステムに入力するんです。そうすると計算式に基づいて、その人の性格、運気の上げ方、長期的な運気の流れなどの結果が、シートになって出力されます。

ただこの結果を見ても、普通の人は何が書いてあるか分からないですよね。これを読み解いて皆さんに解説するのが、私の仕事です。

占い結果が書かれたシート。割り当てられた漢字には全て意味があり、それを尾崎さんが解説してくれる。

ーー そんなシステムがあるんですね!

そうなんです。このシステムは私の師匠が作ったもので、月額制で使わせてもらっています。

占いというと、水晶玉やタロットカードを思い浮かべる人も多いかもしれません。でも四柱推命で使うのは、基本的にこのシステムとデータだけ。

僕の感性を使って占うのではなくて、「この生年月日時に生まれた人は、こういう性格・運命を辿りやすい」といった、何百年前にも遡る統計データに基づいて占うんです。

緻密な計算を経ているので、的中率が高いと言われているんですよ。みなさんお馴染みの動物占いも、四柱推命の統計データが元になっています。

ーー 占い師って、毎日ひたすら人を占っているんですか…?

基本的にはそうですね(笑)。かれこれ5千人以上の方を、占っていると思います。

「占いお見合いパーティー」の企画もしていますよ。パーティーの前に参加者の生年月日を調べて、参加者同士の相性を%で出しておくんです。

最初はそれを内緒にしておいて、パーティーの中でペアを組んでもらう。そして「実は今のペアは、とても相性が良い人です!」とカミングアウト。結構盛り上がるんですよ😇

運勢本も、絶賛製作中です。生年月日によって恋愛運が高い日や、行動を起こすと上手く行く日などが決まっているんです。それをひたすら計算して出して、本にまとめるという作業をしています。

尾崎さん力作の運勢本。かなり細かく運勢の高い日が分かるそう。

占いは「信じてなかった」

ーー もともと占い好きだったんですか?

いえ、実はそこまで信じていませんでした。でも23歳の時に、四柱推命の占いを受けたことがあって。その内容にものすごく納得感があり、「ビビビ」ときたんです。「この道に進もう」と直感して、迷うことなく今に至りますね。

ーー え…そんなにすぐ決意できるものですか?

決意してしまったんですよね(笑)。子どもの頃から、「普通のサラリーマンにはなれない」とは何となく感じていて。大学も行っていないですし。そういう悩みもあって、占い師という職業に何かピンと来たんだと思います。

ーー なぜ四柱推命を選んだのですか?

最初に占ってもらった時の腑に落ちた感覚と、占い経験を積むにつれて確信が強まってくる感覚。この2つがしっくり来たんだと思いますね。

占いの結果と、「この人って、こういう人かな…?」という自分の直感が合致するのも、楽しいですよ。僕のFacebookの友達・約700人の生年月日を入力して、ひたすら検証を繰り返していた時期もありました(笑)。

ーー そもそもどうやって勉強するんですか?

基本は本を読んで勉強しますね。学校も資格も特にありませんから。でも実は最初、占いを商材にしているいわゆる詐欺グループに騙され、高額のスクールに行ったこともあります…。

ただこの占い自体は本物だと思ったので、100万円払いました。その分、2週間全力で学び切り、そのスクールは抜けました。

あとは実践を積むのみです。最初は実力もまだまだだったので、SNSを通じて知り合った人を無料で占っていました。100人くらい占ってみると、占いの後に状況が好転したと報告してもらえたり、喜んでお金を置いていってくる人が出てきたり、徐々に手応えが出てきたのを覚えています。「アドバイスに沿って行動したら彼女ができました」とか(笑)。

「無料で占って大丈夫なの?」と思うかもしれませんが、タダで占った方がむしろ、自分に返ってくるものが大きいと思うんです。実際に無料で占うと、その後大きなイベントに呼んでもらえたり、いろんな人に紹介してもらえたり、様々な良いことがありました。自分から「GIVE」する姿勢が大事なのかもしれません。

占い屋tricocoは、那覇市中心の商店街にあります。

ーー 占い師の醍醐味は何ですか?

人のストーリーを聞けるのが、何より楽しいですね。占い結果のおかげで「この人は歴史に興味があるのかな?」とか、その人の性格や関心ごとを知る糸口が掴めるんですよ。以前はその糸口のおかげで、ウイグル人の歴史について1時間以上語られたこともありましたが(笑)。

でもそれだって、占いによるフックがなければ聞けなかった話。そういう皆さんのお話を聞けるのが、何とも楽しいです。

また、占いにはカウンセリング的な要素もあると思っていて。以前、結婚相手のことですごく悩んでいる方が、お店に来てくれたんです。かなり落ち込んでいたので、定期的に連絡を取って何度もお話を聞きました。

そんなやり取りをしているうちに、だんだん元気を取り戻してくれて。僕の占いで、次の日をポジティブに生きるパワーを与えられたら、こんなに嬉しいことはないですね。

人が占いに求めるもの

ーー 人は占いに何を求めているんだと思いますか?

うーん、「安心感」ではないでしょうか。友達に指摘されるとちょっと嫌だなってことでも、占い師から客観的に言われれば、何となく納得できますよね。「背中を押してほしい」「人に判断してもらって安心したい」。そういった気持ちで来てくださる方が多いと思います。

線が引いてある項目が私(かない)の特徴。否めない。あと「お酒に注意」とのこと。

ーー これから何をやって行きたいですか?

運勢本の作成です。四柱推命は生年月日からその人の性格を占うので、頻繁に変わるものではないんですよ。なので「占いを受けて一回きり」という人が多いのが現状なんです。そこでもっと定期的に発信できるものを作りたいと思い始めて。1年間の運勢の波を伝える「運勢本」の製作に、行き着いたんです。

正直、今出版されている占いの本に少し不満もあるんです。本屋さんにある占い本を全部買って読んでみたのですが、たとえば「1993年生まれの人は、1990年生まれの人と相性が良い」と言われても、その年生まれの何万人と全員相性が良いなんて、あり得ないじゃないですか。

一方四柱推命は、人間を21万6千通りのパターンに分けて考えるんです。その分、やはり的中率の高い占いを届けられるんじゃないか、と思っています。製作中のこの運勢本を、定期的に皆さんの元に届けられるようにすることが、僕の直近の目標ですね。

略歴:四柱推命占い師。5千人以上を占った実績がある。香川県出身で、結婚を機に沖縄県に移住。那覇市で占いの館「占いならtricoco」を経営する。メモをするのが好きで、メモをとっている「尾崎ノート」は40冊にのぼる。