自由になりたいなら、天才になれ。そろばん起業家の哲学

「幸せになるためには、天才になるしかない」

 一見突拍子もないコンセプトとともに、高橋佳朗くん(28)が昨年2月に立ち上げた「佳日そろばん教室」(以下佳日)。新卒入社のソフトバンクを2年で退社した後、そろばん10段、全国大会優勝の圧倒的実力を武器に事業を始め、開業後3ヵ月で黒字化を達成した。

 初月は5人だった生徒数も、2年足らずで約150人に。今年8月には法人化も実現した。インタビューを貫くキーワードは「天才を育てる」。富士見ヶ丘駅前にどっしり構えた教室で、佳朗くんの目指す生き方を聞いた。

ミッションは天才を育てる

ーー佳朗、久しぶり〜(佳朗くんは、大学時代のゼミの友人です)。早速ズバリの質問なんですが、佳日が目指すゴールを教えてください。

 佳日のミッションは、「天才を育てること」。自由を手に入れて幸せになるためには、天才になるか、超ウルトラスーパーバカになるか、の二択しかないと思っていて。

 中途半端に知識や良識があると、「結婚しないと不幸」とか「それって人としてどうなの?」といった周りからの批判に、いちいち悩まないといけないじゃん。それじゃあ幸せになれないよなって。

 自分の幸せを掴むために、「いやいや、常識が間違っているんだよ」と堂々と言うだけの能力、スキル、自信をつけさせることが、最終的な目標。

 その能力の1つを、そろばんを通じて身につけさせたい。というのも、そろばんは「はじめの一歩」として最適なんです!

 その場ですぐ答えが出る上に、スモールステップでレベルアップできるから、確実に成長を実感できるんだよね。計算早ければ周りにも褒められて、自己肯定感もうなぎ登りですよ😌

常識を疑う思考力を磨く

佳日では、そろばんだけじゃなくて、思考力も伸ばすよ。例えば「何で机に座っちゃいけないの?」みたいな質問をされたら、「何でだと思う?」って聞き返す。それでちょっと飽きてそうな生徒も混ぜて一緒に考えて、必ず自分なりの回答を出させる。子どもの発想力にびっくりさせられることも多いよ。

 この前生徒が、「水たまりからウナギが出て来た、と思ったらヘビだったよ!」って(笑)。大人だったら、水たまりからウナギが出てくるなんて発想、絶対できないよね。

 こういう子どもの感性は大事にしてしていかないと、と思う。結局そろばんに限らず伸びる子は、国語力が高い。だから佳日では、こんな問答みたいな応用問題を大事にしてます!

圧倒的な量を積み重ねよ

ーー佳朗は、そろばんという好きなものを見つけて、さらにそこで突き抜けられたよね。好きなものを発掘する過程と、そこで才能を開花できた方法をそれぞれ教えてほしい!

 そろばんと出会ったのは完全に運!小学生の頃は宮城県の超ど田舎に住んでいて(日本一標高の高いアパートに住んでいたらしい)、家も全然裕福ではなかったんだけど、たまたま家の近くにそろばん教室の出張所が来ていて。

値段が安かったから始められただけだから、当時俺には本当にそろばんしかなかった(笑)。最初からそろばんとの相性は良かったんだけど、本格的に打ち込み始めたのは引越し先の千葉で、スパルタの教室に通い出してから。

 週7日通って、土日それぞれ13時間そろばんやってたら、日本一になっていました🤗

ーー週7日でそろばんは、頭おかしい笑!

 そう、最低限のセンスがあって、週7日・土日13時間そろばんやってれば、誰でも日本一になれるよ。天才は生まれるものではなく、成るものだから(キリッ)。

 逆に、積み重ねがないと、絶対に天才にはなれない。「神童」ってよく聞くけど、おとなで「天才」って言われている人はなかなかいない。神童が天才になれなかった理由は、積み重ねをしなかったから。その差だね。

 ただ今思うと、俺がそろばんで日本一になれたのは、スパルタ教室で管理されていたことが大きいと思うんだよね。さらに突き抜けたいなら、自ら考えて、自ら動けるようにならないといけない。

 そんな思いもあって、佳日では選手コースみたいなことはやらないし、長時間つきっきりの個別指導もしない。佳日は才能を発掘したり、モチベーションを維持する場で、あとは生徒が自らどんな方法でもいいからやることが大事だと思っている。

佳日そろばん教室は、京王井の頭線富士見ヶ丘駅徒歩1分

良いとされていることを、やめよう

ーー好きなことが見つかっても、やっぱりそこで突き抜けるのって大変じゃないですか。昔からやってる習慣とか思考回路ってある?

 世の中で良いとされていることを、やめよう。

ーーちょっとよくわかりません(笑)。

 例えば、「数学の勉強は、朝やった方が頭が働いて良い」とか、ハウツー本に書いてありそうなこと。否定はしないけれど、結局個人に合う合わないがあるので、あまり意味がない。自分で自分に合ったやり方を考えることが大事だと思うな。

 習慣については柔軟主義を徹底している。 例えば「毎日外で素振りをしよう」と目標を決めたけど、台風が上陸して明らかに外に出られない…ってこともあるよね。そんな時に、室内で筋トレするとか、他の練習でも代替OK!という考え方。「完璧主義にならないことを、完璧に徹底する」みたいな。

高3の夢は世界征服

ーー佳朗は高専を4年で中退して、大学はスペイン語学科に入ったよね。そういえば何でなの?

高3の時の将来の夢は世界征服だったんだよね(笑)。高専でドイツ語と英語をやっていたから、ヨーロッパと英語圏は征服できる。「南米を征服するにはスペイン語だよな」と思ってスペイン語学科に入った。

ーー私のメモに「南米征服」「スペイン語」しか書けなかったんだけど、大丈夫かな😇?でも高専を卒業してからでも良かったのでは?

 高専は俺には合わなかったんだよね。情報工学科でプログラミングやってたけど、あまり興味が持てなかった。当時はIT出身のカリスマ経営者とか全然知らなかったこともあって、エンジニアは違うかなと。

 卒業まであと1年だったけど、時間を無駄にしたくなかったから。で、南米征服を目指して、スペイン語学科へ。

「クズ社員」のソフトバンク時代

ーーソフトバンクを2年で辞めて起業した訳だけど、ソフトバンク時代は何を考えながら仕事していたの?

 仕事はしてなかったね笑。無駄にトイレ行ったり、フロアを歩き回ったり笑。クズ社員の王様でした(キリッ)。

ーー今の姿からは想像つかないな(笑)。何がつまらなかったの?

 官公庁・大企業向けの部署だったから、攻めた営業が無理だったし、導入が2年後とかで「いや、評価される頃には会社辞めてるよ笑」って。新規事業の部署とかだったら、もしかしたら今も働いていたかも。

 あと「こんなの常識だろ」みたいなマナーに馴染めなかったし、馴染む気もなかった。「僕はこう思う」と言っても聞く耳を持ってもらえないことも多くて、議論ができない環境だったことも嫌だったな。

佳日に置いてある時計。メッセージが粋。

仕事と日常を分けない

(トイレから戻って来て)あと、世界は繋がってるよ!と言いたい。

ーー(唐突だなあ。)

 例えば、学校で覚えた四字熟語をすぐ日常会話で使ってみたり、スーパーで「ネギ98円を4本買ったらいくら?」って暗算したりと、学びと日常は繋がっているんだよ!と。その2つをつなげられれば、頭を使って考える回数が必然的に増えるから思考力が伸びて、より効率的に天才に近づける。そもそも学びと日常をくっつけた方が人生楽しいよ。

ーーその理論でいうと、ワークライフバランスはクソだということですか?

 クソというか、THE・クソ(笑)。「え?仕事の8時間、ずっと我慢してるの?」っていう気持ち笑。100%幸せになるには、仕事とプライベートを分けずに、楽しいことを仕事にしていかないと。

 楽しいことを仕事にできれば、トップを目指せるし、自ずとAIやロボットにも淘汰されない実力が身につけられる。

徹底して自立した個人をつくる

ーー佳日株式会社の今後のビジョンを教えてください。

 やっぱり俺は自立した個人が好きなんだよね。ということもあって、士業関連の事業は絶対やるよ。弁護士でも行政書士でも、士業って自分で仕事を選べて、自分の給料も決められる、ものすごく自由な職業。それにも関わらず社会的なステータスは高いし権威もある、ものすごくコスパの良い職業だと思うんだよね。

 個人的にも税金の仕組みを勉強するのが好きだから、自分も勉強して税理士やら司法書士の資格を取って、起業関連の面倒は全部みられるようになりたい。

 と言っても、結局ビジネスはどこかでつながるんだし、面白くて且つ利益化できれば何でもやるよ!富士見ヶ丘に王国を作る!って言って、水道のインフラ整備の仕事始めているかもしれないし。

ーー(あ、また変なこと言ってる。)

 生きることに直結することは全部押さえたい。農業で食料も確保できるようにしたいし、水のためにも山も買いたい。日本が潰れても、個人で生きていけるようになりたい、と本気で思っているよ。それこそが、究極の自立した個人だと思う。

略歴起業家。富士見ヶ丘にて「佳日そろばん教室」を運営。そろばんの段位は10段、全国大会優勝の実績を持つ。高専で情報工学を学ぶも、4年で中退。その後上智大でスペイン語を習得し、新卒で入ったソフトバンク社を2年で退社、起業する。ちなみに陸上もすごい。大学から始めたにも関わらず、100m走と走高跳で上智大歴代1位の結果を残す(2013)。ニックネームは「よしろー」。
佳日のホームページはこちら。
https://kajitsu-soroban.com