こんな時こそ、読書。「変な人」が勧める、今読むべき3冊
友達の家に遊びに行って、一番テンションが上がるポイント。そう、それは本棚を覗くことです。
人の本棚って、なぜか異様に魅力的。似たような趣味の本を見つけて嬉しくなったり、その人をもっと知った気になったり。
ということで、今回は「変な人」の本棚を覗き見る企画。UNIQUESでインタビューした3人が、特別に書評を寄稿してくれました。新型コロナウイルスで外出も難しい今、家でのんびり過ごすお供にしていただければ嬉しいです。
『ことり』小川洋子
あるレコーディングの後、当時のメンバーさんやスタッフさんが食事をして帰るというので一緒に行ったのですが、なぜか気持ちが晴れずに5000円を置いて先に帰ったことがありました。渋谷の街の真ん中で、音楽がやりたい一心で会社を立ち上げたはいいものの、毎日プレッシャーが大きいせいで、ただただ、ずいぶん疲れていたんだと思います。
ふらっと入ったTSUTAYA書店で、ぶらぶらとひとりで本をながめていると、驚くほど心が落ち着くことに衝撃を覚えたことを思い出します。学生時代大好きだった読書を忘れて、ライブやイベント、音楽ばかりやっていた私にとって、本と私だけの世界が広がることがとても心地よかったのです。そんな日に手に取った本のひとつが小川洋子さんの「ことり」でした。
「他の人のようには」世間と交われない、兄弟のひっそりとした生活と、そこで毎日丁寧に積み上げられる愛が、なんとも言えなくしっくりきました。今でも時々疲れると目を通します。インターネットや世間とのつながりに疲れている方にはとてもおすすめです。カナリアのさえずりが、静かに心を癒してくれます。
『峠』司馬遼太郎
学生の頃にこの本を読んで受けた衝撃は、今の私にも活きています。「峠」は、幕末から明治維新の激変の時代を生きた、河井継之助という武士の一生を、司馬氏らしい粋な語り口で描いた小説です。
舞台は、戊辰戦争。明治政府を樹立した薩摩藩・長州藩を中心とした新政府軍と、旧幕府勢力が争った戦です。幕末の沸騰した時代に独自の考えを貫こうとした男の美学が詰まっていて、「かっこいい!」と無邪気に興奮したのを覚えています。
戊辰戦争が始まると各藩が新政府側につくか幕府側につくかという究極の選択を迫られる中、継之助は武装中立による和平斡旋を本気で志したと言います。当時日本に3門しかなかった連射式機関銃・ガトリング砲を2門も備え、軍の近代化を進めるなどして小藩を躍進させたのです。
結局交渉は決裂、新政府軍を大いに苦しめた長岡藩は継之助の負傷もあって敗退し、多くの戦死者が出て後世の彼の評価が分かれる原因になりました。
賛否があるとは言え、時代の弱者でありながら当時誰も思い描けなかった戦略をとった彼の生涯の迫力に圧倒されます。流れに身を委ねることも強者にへつらうことも選ばず、独立を保つことを目指した男。
コロナの激震に揺れる今の世界にあっても、彼のような強さが求められているし、私自身も変幻自在という城を持つ身として様々な決断を下す際にこの本の中身を思い返すのです。
独りよがりによる犠牲は出すべきではありません。しかし独立自尊の精神の下、私にしかできない舵取りをしたい。若き日の自分を振り返りながら今はそう青臭く思っています。
『「最強」ソリューション戦略』高杉康成
ちまたでよく聞く「組織力」ですが、「ではどんなモノ/コトが組織力に該当しますか?」と質問されると、意外とこたえに窮するのではないでしょうか。そこにスッと刺さる良書です。
ビジネス界で知らぬ者などいない【キーエンス】。圧倒的高収益を叩き出す営業メソッドと組織力、その一端を覗けます。
本書の流れとしてまず「良いソリューション営業とは?」の問いがあります。お客さんから「ドリルが欲しい」と言われたとき、まさかそのままドリルを提案していませんよね?
中盤は「良いソリューション営業を実践するには?」。管理職の皆様、まさか部下に「なんであれ聞いてこなかったんだ?!」なんて言っていませんよね?営業推進や販売支援の皆様、営業職の御用聞きになっていませんよね?
終盤「優秀な個人だけでなく、そうでない人たちも戦力にするには?」。モチベーションを維持・向上させるための評価制度やインセンティブ設定についてですね。ここはエリートでも普段想像しない領域なので、話せると役員の目に留まると思います。
営業における様々な視点と、たくさんの気付きを与えてくれる良書、オススメです!